60代女性の話です。
1か月前から誘因なく首の痛みと両手のしびれを自覚するようになります。
しばらく様子をみていましたが次第に両手の力が入らなくなり、ついに整形外科外来を受診されました。
対応したドクターNは患者さんの手の筋肉の萎縮パターンと両手指の伸展力低下を確認すると、「原因は首だ!」といって頸椎の画像検査をすぐにオーダーしました。
頸椎のCT画像では、予告通りに第7頸椎(黄色矢印)が圧潰して脊柱管内に突出しC8髄節を強く圧排していました。C8髄節は第一背側骨間筋・小指外転筋(尺骨神経支配)や総指伸筋(橈骨神経支配)など末梢神経支配が異なる筋群を支配しており、本症例ではこれら筋群がすべて障害されています。この手の所見こそドクターNがC8髄節障害を見抜いた根拠なのでした。
さらに第7頸椎椎体は溶骨性病変(癌の骨転移)が疑われたためさらに全身を調べたところ、原発巣として乳癌が見つかりました。
ドクターNは患者さんをすみやかに総合病院へ紹介し、まずは整形外科で頸椎後方固定術が施行され、つぎに乳腺科でホルモン療法が開始となりました。
しびれた手をちらっと診察しただけで病態を見抜いてしまうスキル。
私の心もしびれました。
そういう本物の医者に私はなりたい。