循環器

知っトク!高齢者の足のむくみ

はじめに

高齢者の足はよくむくみます

ご本人・ご家族が足のむくみを心配して病院を受診し、診察を受けても「検査は異常ない」といわれ、とりあえず利尿剤が処方されるもののむくみはよくならないという状況をよく見かけます。

高齢者の足のむくみですが、なかには心不全や腎不全、深部静脈血栓症など重大な病気によるものもありますが、大半は高齢者特有の身体機能低下+生活習慣によって起こります。下肢の静脈血は重力に逆らって心臓に戻っており(下肢静脈還流といいます)、逆流を防ぐ静脈弁下腿筋の筋ポンプ作用によって支えられています。

しかし高齢者では加齢による静脈弁不全や筋力低下+長時間同じ姿勢で座り続けるなどの生活習慣によって下肢に血液がたまり、血液中の水分が血管外に漏れ出すことでむくみが現れてきます。

この足のむくみが放置されて重症化してくると、足の重み・痛みで歩行困難になったり、皮膚の血流うっ滞から皮膚のバリア機構が低下してちょっとした傷から皮膚潰瘍ができたりします。

そうならないためにも足のむくみへの対処法を知って実践することが大切です。

ポイントは以下のふたつです。

圧迫療法

もっとも有効な対処法です。

弾性ストッキングは履くのも脱ぐのもすごく大変なので、実際には弾性包帯を巻く方法が実用的です。

包帯の巻き方にはいろいろありますが、「下腿潰瘍・下肢静脈瘤診療ガイドライン」で紹介されている方法がシンプルで覚えやすくおすすめです。

朝起床時すぐに弾性包帯を装着して就寝時まで続け、就寝時は包帯を外して下腿を約10cm(座布団2枚を下腿の下に敷いて)挙上するのが基本となります。

なお圧迫療法には禁忌があります。

閉塞性動脈硬化症などの動脈血行障害では、加圧すると血行障害がさらに増悪します。安静時の痛み、間欠性跛行がある場合やABI(下肢圧/上肢圧比)が0.8未満では使用を避けます。

またうっ血性心不全では、加圧すると静脈還流量が増加するため心不全が悪化します。

ですから圧迫療法を開始する大前提として、心血管機能に大きな問題がないことをあらかじめ病院で確認しておくことが必要です。

エクササイズ

下肢筋力の維持強化に役立つエクササイズを紹介します。

ふくらはぎの筋(下腿三頭筋)は筋ポンプ作用を通して、下肢静脈還流で大きな役割を果たします。

大腿四頭筋膝関節伸展作用を通して、歩行立位動作で大きな役割を果たします。

これらエクササイズを習慣化することが、むくみの予防あるいは再発予防につながります。

おわりに

自験例を示します。

リウマチ治療中の70代女性で、膝関節障害のためふだんからシルバーカーを使用されている方です。

以前から利尿剤抵抗性の両下腿浮腫があり、あらたに左ふくらはぎに皮膚潰瘍ができたとのことで紹介されました。

入院して頂いた上でもろもろ評価しましたが、心不全、腎不全、ネフローゼ症候群、深部静脈血栓症、血管炎などの所見はなく、最終的に「高齢者の慢性下肢浮腫」と診断しました。

さっそく日中の弾性包帯による圧迫療法夜間就寝時の下肢挙上を開始したところ、浮腫は比較的すみやかに改善して皮膚潰瘍もきれいに治癒しました。

さらに再発予防のためのエクササイズ(上記)をご本人にしっかり指導したのち、退院して頂きました。

退院後はひどいむくみの再発もなく、お元気に過ごされています。