第2回です
PMRらしさ
臨床的には、
- 高齢者が急に四肢近位部の痛み・こわばりを訴えて動けなくなる
- 血液検査では、炎症反応(CRP陽性)を認める
場合に、「PMRっぽい」と考えます。
しかし、これだけの情報で「PMR」だと決め打ちしてしまうのは御法度です。
つまずき症例
80代女性の話です。
自宅で急に体の痛みを訴えて動けなくなり、家人に連れられて前医を受診しました。
担当した(そこそこ勉強している)医師は、血液検査で炎症反応の上昇を確認すると、
「これはリウマチ性多発筋痛症ですね」とさらりと言い、
追加の検査は行わずに、ステロイドの投与を開始しました。
その後の患者さんは…
体の痛みはよくなるどころか日増しにひどくなり、
さらにはボーっとして反応が乏しくなり、
ついには瀕死の状態となって、
高次医療機関へ緊急搬送される事態となりました。
搬送先では…
肺炎球菌による肺炎から菌血症をきたし、菌が脳や全身の関節の中にまで広がっていることが判明しました。
本症例の問題点は、菌血症による「PMRっぽい症状」を「PMR」と早とちりし、
火(細菌による炎症)に油(ステロイド)を注いで大炎上(重症敗血症)を招いたことです。
除外診断が基本
「PMRっぽい症状」は、菌血症(特に感染性心内膜炎)、血管炎(特にANCA関連血管炎)、関節リウマチでもみられます。
これら疾患は、最適な治療法がそれぞれ異なるため、ていねいに除外することが大切です。
菌血症は、抗菌薬で治療を行い、ステロイドは禁忌です(つまずき症例)。
血管炎は、免疫抑制剤+大量ステロイドという、かなり強力な治療が必要です。
関節リウマチは、ステロイドだけではよくならず、抗リウマチ薬の導入が治療には必須です。
実際の診療現場では…
「PMRっぽい症状」をみたら、血液培養、血管炎のマーカー(MPO-ANCA、PR3-ANCA)、リウマチのマーカー(リウマトイド因子、抗CCP抗体)を追加で提出しておきます。
結果が出るまでは、通常の痛み止め(NSAIDs)を処方して対応します。
検査結果がすべて陰性であることを確認できたら、そこではじめてPMRと診断し、ステロイドの投与を開始します。
まとめ_2
- PMRの基本は、とにかく除外診断です。
(次回につづく)