第3回です
診療現場のジレンマ
大事なことなので何度も繰り返しますが、
- PMRのキホンは、除外診断です
しかしどれだけ除外を尽くしても、
- PMRのなかに血清反応陰性関節リウマチ(リウマチのマーカーが陰性の関節リウマチ)が混入してしまいます
病状が両者でほぼ同じであることから、区別できないのです。
しかし最適な治療法は両者で異なるので、治療のためにはなんとか区別しないといけない。
これは、診療現場のジレンマともいうべき問題です。
幻の学会発表
実は、上記の「ジレンマ」に対して私なりの解決法を見出しました。
今月内科学会地方会で発表する予定でしたが、
コロナ禍であえなく中止に。
そこで今回は、幻となった学会発表の内容を紹介します。
タイトルは…
PSL15mgへの反応性で
リウマチ性多発筋痛症(PMR)と血清反応陰性関節リウマチを鑑別し治療を行った2例
2例とも60代男性で、病状もほとんど同じでした。
症例①
60代男性です。
2か月前から四肢近位部のこわばり、 多関節痛が出現してきました。
近医でリハビリを受けるも改善なく、当院外来を受診されました。
診察では右上肢挙上困難で右肩インピンジメントサイン陽性、手指屈筋腱鞘炎、多関節炎(手・MCP関節)を確認しました。
採血ではCRP 5.50mg/dl、血液培養陰性、MPO-ANCA・PR3-ANCA・RF・抗CCP抗体すべて陰性でした。PSL15mg内服を開始したところ、
2週間後には病状の著明な改善(速やかな寛解)が得られ、
最終的にPMRと診断しました。
その後もPSL単剤で治療を継続し、現在も寛解を維持しています。
症例②
60代男性です。
1か月前から四肢近位部のこわばり、多関節痛、発熱が出現してきました。
近医でNSAIDs処方を受けるも改善なく当院外来を受診されました。
診察では上肢挙上・起立動作困難、手指屈筋腱鞘炎、多関節炎(手・膝・足・MTP関節)を確認しました。
採血ではCRP 9.38mg/dl、血液培養陰性、MPO-ANCA・PR3-ANCA・RF・抗CCP抗体すべて陰性でした。PSL15mg内服を開始したところ、
2週間後には病状の改善は全く得られず、
最終的に血清反応陰性関節リウマチと診断しました。
PSLを減量しながらリウマチ治療を開始(ステロイド関節注射+IGU25mg+MTX12mg/w)、
疾患活動性がなお残存するためリウマチ治療を強化(トシリズマブ皮下注導入)して、
ようやく寛解を達成しました。
考察
CRP陽性の体の痛みでは、
菌血症、血管炎、血清反応陽性関節リウマチ(リウマチのマーカーが陽性の関節リウマチ)を除外して
はじめてPMRの可能性を考えます。
しかしPMRのなかには血清反応陰性関節リウマチが混在しており、
あらかじめ両者を鑑別することは困難です。
そこで本症例のように、
シンプルなPMR治療(PSL15mg内服)を先行させて2週間行い、
それへの反応性で両者を鑑別して治療法を調整するというアプローチ(診断的治療)が有用と考えられます。
まとめ_3
- PMRと血清反応陰性関節リウマチは、PSL15mg内服への反応性で鑑別できます。
(次回につづく)